リードの組み立て方がわからない、または教えられないといった悩みを抱えているキャッチャーや指導者は多いと思います。
実際にリードは全投球に関与するため、ピッチャーの能力を活かせるかはキャッチャーのリード次第です。しかし、リードはキャッチャー特有であり、組み立て方がわからない指導者も少なくありません。
別の記事では、配球の重要性について解説しましたが、この記事ではより実践的な「リードの組み立て方」について、高校まで10年間キャッチャーでプレーした筆者が解説します。
結論から言うと、リードを組み立てる際は「リードを組み立てる基準」「アウトローの使い方」「リードの軸にする変化球」が重要です。
リードを組み立てる基準

まずはリードを組み立てる基準について解説します。前提として、リードは「総合的な根拠による組み立て」であり、配球は「セオリーによる組み立て」です。そして、トーナメント戦では特に、リードを組み立てるために配球が重要になるため、配球に関する知識が必要です。詳しくは以下の記事に書いてあるので、興味がある方は是非ご一読ください。

まず、リードを組み立てる総合的な根拠とは
- 相手打者の情報
- 配球のセオリー
- 自チーム投手の能力、調子
- 試合状況
が挙げられます。
しかし、プロ野球や大学野球のリーグ戦と違い、高校野球などのトーナメント戦では、相手打者の情報がないことがほとんどです。そのため、必然的に配球のセオリーを重視してリードを組み立てます。
そして、試合の終盤には相手打者の特徴を掴めますが、相手もこちらの投手の特徴を把握します。そこで、投手の能力を活かすかつ、相手打者に的を絞らせないリードが必要になります。
相手打者に的を絞らせない・投手の能力を活かすリードの組み立て方を具体的に解説します。ポイントは相手打者の「狙い」と「意識」です。
アウトローの使い方

リードの組み立てを考える上で重要なもの1つ目は、アウトローの使い方です。実際に、野村克也さんも「外角低めは投球の原点」とおっしゃっています。
そこで、まずはコース別被打率を見てみましょう。




コース別被打率 出典:Gods do not answer letters.
上記は2015年から2017年までのNPBのデータを対象に集計したコース別被打率であり、視点は投手からのものです。実際にコース別被打率では、アウトローが全体的に低いです。そのため、アウトローを軸にリードを組み立てることは間違いではありません。
しかし、アウトローの被打率が低くても、アウトローが得意な打者はいますし、アウトローが狙われることもあります。最初に書きましたが、リードで大事なことは相手打者の「狙い」と「意識」です。
そのため、打者がアウトローを狙っている、もしくはアウトローに意識が傾いているときに、いかにインコースや高めの球を使えるかが重要です。
アウトローを狙う打者の特徴として
- インサイドアウトのスイングができていない(ドアスイング)
- 長身で手足が長い
- 思い切り踏み込む
などが挙げられます。
また、打者の意識がアウトローに傾く状況は
- 右打者が進塁打を打ちたいとき
- ゴロを転がしたいとき
が挙げられます。
トーナメント戦の場合、相手打者がアウトローが得意かを1打席目で判断するのは難しいですが、終盤になれば相手打者の特徴も掴めるはずです。アウトローが得意な場合、「インコースを意識させる」「高低で揺さぶる」などのリードで対策しましょう。
また、アウトローを要求する時に「とりあえずアウトロー」「困ったらアウトロー」という考えは良くありません。
例えば、「ボールになる変化球に反応がないから、アウトローのストレートで反応を見る」「打ち気だからアウトローのストライクからボールになる変化球を振らせる」など、意図をもってアウトローを要求することが重要です。
これはリード全般に言えることですが、意図をもって要求することで、打たれた場合もなぜ打たれたかを分析でき、同じ失敗を繰り返さなくなります。これらを意識できれば、コースに関してのリードは十分に組み立てられるようになるはずです。
軸にする変化球

リードの組み立てを考える上で重要なもの2つ目は、「リードの軸にする球種」です。軸にする球種を決めることで、的を絞らせない、投手の武器を活かせるリードになります。
軸にする変化球は、ストレートが武器の投手の場合
- ストライクを取れる変化球
- 決め球になる変化球
です。
繰り返しになりますが、リードで大事なことは相手打者の「狙い」と「意識」です。どんなにすごいストレートでも、狙われたら打たれます(藤川レベルのストレートなら話は別ですが)。また、狙われていなくても意識されていると、ファールで粘られたり、打たれる可能性も高くなります。そのため、変化球をいかに意識させるかが重要です。
変化球を意識させる方法として
- ストライクが欲しい時に変化球でストライクを取る
- 決め球のカウントでストレートではなく変化球で仕留める
が挙げられます。これをやられると相手打者は変化球を意識せざるを得ません。変化球を意識させることで、ストレートにより威力を持たせられます。
変化球が武器の投手の場合も同じく、大事なことは相手打者の「狙い」と「意識」です。そのため、軸になる変化球はストレートが武器の投手と同じく、「ストライクを取れる変化球」と「決め球になる変化球」です。
しかし、変化球が武器の投手の場合、もう1つ軸にする変化球があります。それが「手元で変化する速い変化球」(カットボール、ツーシーム等)です。
理由は、ストレートを活かすためです。変化球が武器の投手は言い換えると「ストレートが武器にならない投手」であり、相手打者はストレートを意識しなくても打てるということです。
もちろん、ストレートの球速や回転数を上げて武器にすることが理想ですが、一朝一夕で良くなるものではありません。ストレート自体のレベルを上げるには、冬の長い期間で良くする必要がありますが、説明が長くなるため別の機会に解説します。
そのため、リードでストレートを活かす必要があります。ストレートを活かすためには緩急を使う方法が考えられますが、その他に球速がストレートに近く、手元で変化する変化球を意識させる方法もあります。
相手打者が手元で変化する球を意識することで、ポイントが近くなり、ストレートで詰まらせられるようになります。
ストレートを活かせれば、球種の選択肢が増え、リードが組み立てやすくなるはずです。
ただ、ストレートが武器の投手、変化球が武器の投手に関わらず、上記の変化球とパターンだけだとリードに幅がありません。上記の変化球やパターンはあくまでも軸であり、そこに他の変化球やパターンも混ぜることで、的を絞らせない、投手の武器を活かせるリードになります。
しかし、この軸以外の部分は投手の持ち球やレベルによるため、試行錯誤を繰り返して、それぞれの最適なリードを見つけてください。
まとめ

今回はリードの組み立て方について解説しました。リードを組み立てるポイントは、「アウトロー」と「軸にする変化球」の使い方で、大事なことは相手打者の「狙い」と「意識」です。
ただ、今回解説したのはあくまでリードの「軸」です。この「軸」に、投手の特性を活かしてどのように肉付けしていくかが重要です。
リードは全投球に関与するため、投手の能力を活かせるかはキャッチャーのリード次第で、勝敗に直結する要素です。リードには、とことんこだわってみてください。
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