「フライボール革命という言葉はよく聞くけど、具体的な内容はわからない」
「小・中学生のバッティング指導にも活かせるの?」
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フライボール革命は大谷翔平をはじめ、メジャーで多くの打者が実践し、日本でも広まりつつあるバッティングの新常識です。
しかし、フライボール革命の内容を詳しく理解している人は多くありません。
また、日本でも広まりつつある新常識ですが、フライボール革命の考えをもとにバッティングの指導をすると、バッティングが悪化する可能性があります。
なぜなら、フライボール革命を実践するためには、一定のスイングスピードと身体が必要だからです。
フライボール革命を理解し、実践するためのカギはバレルゾーンです。
そこでこの記事では、高校野球までプレーし、大学で野球のデータ分析を学んだ筆者が、フライボール革命の内容とバレルゾーン、実践方法まで解説します。
フライボール革命とは

フライボール革命とは、フライを狙って打つバッティングのことです。
フライを狙って打つ理由は、
- ヒットの割合がゴロよりも外野フライの方が高いから
- 打率よりも長打率の方が重要だと考えられているから
の2つです。
1つ目、ヒットの割合がゴロよりも外野フライの方が高い理由は、ゴロで野手の間を抜くことが難しくなったからです。
近年の野球界ではトラッキングデータの発展により、打者の打球傾向が正確にわかるようになりました。
その打球傾向をもとに守備シフトが盛んに敷かれるようになり、捉えた打球も内野手の正面に飛ぶ確率が高くなったため、結果的に外野フライの方がヒットになる確率が高くなっています。
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2つ目の長打率が重視されている理由は、長打が得点に大きく影響するからです。
以下は 2015~2023 年のプロ野球 12 球団の長打率・打率と得点数の相関を示した図になります。


これらのデータからもわかるように、チームの長打率と得点の相関が、打率と得点の相関よりも大きいことが統計的にわかっています。
つまり、打率よりも長打率のほうが得点数に影響しやすいということです。
また、出塁率と得点の相関も高く、出塁率と長打率を足し合わせた値であるOPSが現代野球で重視されていることからもわかるように、長打率は重要な指標になっています。
出塁率や長打率、OPSについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

以上の2つの理由から、MLBではフライが有効であると考えられたため、フライを狙って打つフライボール革命という考え方が生まれました。
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ちなみに、これまでフライが悪とされていた理由は、ゴロのほうがエラーが起こりやすいからです。
フライの場合は捕球のみですが、ゴロの場合はゴロ捕球→送球→送球の捕球と3つのプレーが存在します。
プレーが多いため、必然的にエラーが多くなります。
また、単純にフライよりもゴロの方が捕球が難しいです。
捕球エラーのほとんどがゴロ捕球であり、フライの捕球エラーはあまり見ないと思います。
しかし、「エラーが起こりやすいから」という理由だけで、ゴロを狙うようなバッティング指導は今後の成長に繋がりません。
特に、次のステージでも野球をやる選手が多い小・中学生には、おすすめできない指導方法ですね。
バレルゾーンとは

次にバレルゾーンについて解説します。
バレルゾーンとは端的に言うと、長打やホームランが出やすい打球の速度と角度の組み合わせです。
以下の画像はバレルゾーンを表す図になります。

どんな打球速度・角度で打てば長打になるかを示す指標自体をバレルと呼びます。
そして、バレルゾーンとは理想的な打球速度・角度とされており、このバレルゾーンに入った打球は、打率5割、長打率1.500以上になります。
図からバレルゾーンに入る条件として、打球速度が最低158km/h(98.1マイル)必要ということがわかります。
このようにフライボール革命では、漠然と遠くに飛ばそうとするのではなく、バレルゾーンを目指す打球速度・角度を意識したバッティングになります。
そして、練習では打球速度を実現するためのスイングスピードを意識します。
そこで次の章では、バレルゾーンの打球に必要なスイングスピードと体重を解説します。
フライボール革命を実践するためには

前章で述べたように、バレルゾーンに入るためには打球速度が最低158km/h(98.1マイル)必要です。
ただ、打球速度が158km/hというのはピンとこない方が多いと思います。
そこで、以下の動画を参考に解説します。

結論から言うと、バレルゾーンに入るためには一般体型で75kgの体重が必要です。
まず計算をすると、158km/hの打球を打つためには128km/hのスイングスピードが必要です。
そして、スイングスピードは除脂肪体重(筋肉量と捉えられる)と比例することが統計でわかっています。

128km/hのスイングスピードを出すためには、除脂肪体重で約65kg必要です。
体脂肪率を15%として体重換算した場合、75kgの体重が必要です。
小学生の場合は、ルールブックによるとグランドの大きさが両翼70m、センター85mとなっています。
この大きさで同様に計算すると、スイング速度98km/hと41.6kgの除脂肪体重が必要です。
体脂肪率を15%とすると、フライボール革命を実践するためには、小学生が必要な体重は一般的な体型で約48kgです。
一方で、中学生以降のグランドの大きさは一般と同じとされています。
そのため、フライボール革命を実践するためには、中学生でも必要な体重は一般的な体型で約75kgになります。

つまり、小・中学生にフライボール革命のバッティング指導はむかないということ?
たしかに小・中学生がフライボール革命を実践するのは難しそうです。
小学生で48kgは早熟な子なら到達できそうですが、中学生で75kgは無理があります。
また、除脂肪体重を増やすためには、筋肉量を増やす必要がありますが、中学生に筋トレは推奨されていません。そのため、フライボール革命は中学生には効果的でないと言えます。
そして、小学生の早熟な子がフライボール革命を実践した場合、小学生の間はうまくいくかもしれません。しかし中学生になり、グランドが広くなった時に行き詰まってしまいます。
もちろん、小・中学生でも条件によってはスイングスピードが上がり(インコース、高めなど)、ホームランを打てる場合もあります。
しかし、狙ってホームランを打つのは身体条件的に難しいです。
そのため、強いライナーを意識して、その延長がホームランというバッティングが小・中学生の理想であり、フライボール革命を実践するならば高校生になってからが最適だと考えます。
フライボール革命 まとめ

今回の内容をまとめると以下のようになります。
フライボール革命 まとめ
- ゴロよりフライの方がヒットの割合が高いため、フライが良いと考えられている
- フライボール革命は小学生でも実践可能だが、中学生の実践は難しい
- 大事なのは強いスイングを心掛けること
フライボール革命の内容と小・中学生の打撃指導について解説しました。
小・中学生はスイングスピードが足りないため、フライボール革命は有効ではありません。
そのため、強いライナーを意識した打撃指導が最適です。
スイングスピードを上げるためによく使われるバットの重りの効果的な使い方を解説しています。
興味がある方はぜひご一読ください。

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