フライボール革命とは ~注目されている理由と小・中学生の指導法を解説~

指導法

皆さんの中に「フライボール革命という言葉はよく聞くけど、具体的な内容はわからない」「小・中学生にも同じ内容で指導していいのか不安」と悩んでいる方はいませんか。

実は、フライボール革命の考えをもとに小中学生の打撃を指導すると、打撃が悪化してしまうかもしれません。なぜなら、フライボール革命を実践するためには、スイングスピードが必須だからです。

この記事では、フライボール革命の内容と小・中学生の打撃指導について解説します。

フライボール革命とは

フライボール革命とは、フライを狙って打つ戦術のことです。その理由は、簡単に言えば

  • 安打割合がゴロよりも外野フライの方が高い
  • MLBでは長打率が重視されている

の2つです。詳しく解説します。

安打割合がゴロよりも外野フライの方が高い理由としては、守備シフトが盛んに敷かれるようになり、ゴロで野手の間を抜くことが難しくなったからです。これは、近年のMLBではトラッキングデータの発展により、打者の打球傾向がわかるようになったからだと考えられています。

また、MLBで長打率が重視されている理由としては、長打が得点に大きく貢献するからです。根拠は、チームの長打率と得点の相関が、打率と得点の相関よりも大きいからです。また、出塁率と得点の相関も高く、出塁率と長打率を足し合わせた値であるOPSが現代野球で重視されているのも根拠の1つです。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

【野球指標】OPSとは 重視されている理由や問題点を徹底解説
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以上の2つの理由から、MLBではフライが有効であると考えられたため、フライボール革命という戦術が生まれました。

より詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してください。

フライボール革命は日本人にも可能か 長打量産に必要なものは? - スポーツナビ
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フライボール革命 フライがダメだと言われた理由

では、なぜ今までフライは悪だと考えられていたのか。

守備シフトを敷くことや、長打率を重視したのが比較的最近という理由ももちろんあります。

しかし、その他にも大きな理由があります。その理由は、アマチュア野球において、エラーに占める送球エラーの割合が非常に大きいからです。

フライだと捕るだけで、エラーでの出塁が見込めないため、フライではなくゴロを打つ方が良いと考えられていました。

しかし、この考え方では今後の成長に繋がりません。次のステージでも野球をやる選手が多い小・中学生には、ゴロ打ちを強要する指導は良くないと考えます。

フライボール革命 小・中学生の指導法

では、フライボール革命は小中学生にも効果的なのか。

答えはNOです。理由は、小中学生ではフライボール革命に必要なスイングスピードに到達できないからです。

フライボール革命が発展する中で、どんな打球・角度で打てば長打になるかを示すバレルという指標が生まれました。このバレルゾーンに入った打球は、打率割、長打率1.500以上になります。

バレルによって、メジャーリーガーは漠然とフライを打つのではなく、バレルゾーンを目指して打球速度と打球角度を意識するようになりました。

バレルゾーンの図 出典:MLB.com

しかし、図から分かるようにバレルゾーンに入るためには、打球速度が最低158km/h(98.1マイル)必要です。

打球速度が158km/hというのはピンとこない方が多いと思います。そこで、よりイメージしやすいように解説します。

結果から言うと、一般体型で体重が中学生は75kg、小学生は48kg必要です。

まず計算をすると、158km/hの打球を打つためには128km/hのスイングスピードが必要です。

そして、スイングスピードは除脂肪体重(筋肉量と捉えられる)と比例することが統計でわかっています。

除脂肪体重とスイングスピードとの関係 出典:CYBER BASEBALL

128km/hのスイングスピードを出すためには、約65kg除脂肪体重が必要です。体重換算した場合、体脂肪率を15%とすると、75kgの体重が必要です。

ルールブックによると、中学生のグランドの大きさは一般と同じとされています。そのためフライボール革命を実践するためには、中学生でも必要な体重は一般的な体型で約75kgになります。

小学生の場合は、グランドの大きさが両翼70m、センター85mとなっています。この大きさで同じように計算すると、スイング速度98km/h41.6kgの除脂肪体重が必要です。体脂肪率を15%とすると、フライボール革命を実践するためには、小学生が必要な体重は一般的な体型で約48kgです。

小学生で48kgは早熟な子なら到達できそうですが、中学生で75kgは無理があります。また、除脂肪体重を増やすためには、筋肉量を増やす必要がありますが、中学生に筋トレは推奨されていません。そのため、フライボール革命は中学生には効果的でないと言えます。

そして、小学生の早熟な子がフライボール革命を実践した場合、小学生の間はうまくいくかもしれません。しかし、中学生になった時に行き詰まってしまいます

もちろん、小・中学生でも条件によってはスイングスピードが上がり(インコース、高めなど)、ホームランを打てる場合もあります。しかし、狙ってホームランを打つのは身体的に難しいです。そのため、強いライナーを意識して、その延長がホームランというバッティングが小・中学生の理想で、フライボール革命を実践するならば高校生になってからが最適だと考えます。

フライボール革命 まとめ

今回の内容をまとめると以下のようになります。

フライボール革命 まとめ

  • ゴロよりフライの方がヒットの割合が高いため、フライが良いと考えられている
  • フライボール革命は小学生でも実践可能だが、中学での実践は難しい
  • 大事なのは強いスイングを心掛けること

フライボール革命の内容と小・中学生の打撃指導について解説しました。

小・中学生はスイングスピードが足りないため、フライボール革命は有効ではありません。そのため、強いライナーを意識した打撃指導が最適です。

小・中学生に指導する際に大事なことは以下の記事で解説しているため、興味があればぜひご一読ください。

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